いくつもの意外性が用意された、余白を楽しむ家
004 岡山 注文住宅
 
床面積50坪分もの足場板を使って、施主であるお客様自ら内装を仕上げられた一戸建住宅です。いただいた完成報告の素晴らしい写真に興味を引かれ、岡山県加賀郡吉備中央町でバラ作りをされている吉川さんのお宅をお訪ねしました。



美しい丘が連なる吉備中央町は、宮崎駿の世界を彷彿とさせるような、どこか懐かしくてのどかな場所です。
“円城ふるさと村”という、楽しいゲートを通り抜けていくと、道のあちこちに「山菜大臣〇〇〇夫」とか「ぶどう大臣〇〇〇子」といった看板が目につきます。都会から新しく農業を始めた人たちが集まっているようで、田園風景の中にも遊び心のある都会的センスを感させる不思議な場所です。







吉川さんからのメッセージ

完成したら、もう終わりの家でなく、そこからいろいろ足したり引いたり、変化を楽しむことのできる家が欲しかったのです。予算的な面からとにかくローコストで容量の大きい頑丈な入れ物をプロに作ってもらい、中は自分でなんとかしようと思っていました。住まいとして求められる機能としては、決して快適ではありませんが、不自由さの自由さを楽しんでいます。
ポイントとなったのは足場板との出会い。たった一人で、貼っていくのはとても大変な作業でしたが、一枚一枚表情の違う板をどう並べるか、こだわりながら敷いていきました。
こんなにこの空間に溶け込み、お気に入りの家具とも抜群の相性とは驚きでした。
また、もうひとつ意外だったのが、足場板の吸湿率のよさ。設計士さんからは、「結露がひどいかも」といわれていたのに、湿気はみんな足場板が吸ってくれて、室内はとてもカラッと快適です。

「時間売ります」
自分たちの住む家ではありますが、都会に住む人たちが訪ねてきて「扉の向こう流れる全く違う時間」を楽しめるスペースとしても活用していきたいと思っています。興味のある方はぜひご連絡ください。
吉川さんプロフィール

大阪で仕事をしていたが、ランに魅せられ自ら栽培に携わることに。研修中に出会ったバラ栽培農家に心酔。岡山の吉備中央市でバラを作り始めて10年。オーストラリアで出会った妻のユキさんと2匹の大型犬と暮らす。
 
+ + + 岡山県加賀郡吉備中央町
+ + + 吉川雅之
+ + + Mail rosemont@h7.dion.ne.jp

WOODPROから

「大工仕事は今回が初めて」という吉川さんの見事な作品!には脱帽でした。この度の施工に合わせて初めて丸ノコを買われたそうですが、なかなかどうしてプロ顔負けです。
ローコストで機能的な素材が杉足場板以外にもいろいろあるのも驚きでした。建設資材や農業資材をさりげなく利用されてましたが、本当によく馴染んでおり、ちょっとした発見です。

四角い鉄の箱?というイメージの外側と味わい深い足場板をフローリングや家具にふんだん使った内側のギャップに「住まいってこういうもの」という予想(既成概念)を見事に裏切られました。
あの不思議な空間で枠組みにとらわれない価値観に気づく…まさに吉川さんの狙い通りですね。

日頃の喧騒から解き放たれて「時間」を楽しんだひとときでした。
今度はお気に入りの焼酎を持って満天の星空を見にうかがいます。
本当に楽しい時間をありがとうございました。


PS.吉川さんも参考にされた「HASUDAの家」を設計監理されたクレパスのささき様から偶然にも連絡がありました。その後の様子をうかがったところ、ますます快適でお施主様も喜んでいらっしゃるとのこと、本当に安堵いたしました。
吉川邸の調湿効果のお話をしたところ、「HASUDAの家」ではお風呂上りにバスマットを使わなくとも快適に住まわれているエピソードをお伺いしました。木がちゃんと呼吸し続けるようにと、吉川さん同様に浸透型(非造膜タイプ)の塗料をご利用になったのがポイントのようです。
やっぱ無垢の木っていいですね♪



別冊天然生活に特集(7P)で掲載されました!

誰かの真似をするのではなく、流行を寄せ集めるのでもなく、
自分らしい部屋をつくるためには、
まずは足元を見つめることから始めなくてはいけません。
「たったひとつの住まい」は、
たったひとつの人生から生まれるのですから。

別冊天然生活
「暮らしのまんなか」からはじめるインテリア VOL.2より
地球丸 定価1200円
2006年12月17日発行